コイン業界ニュース・コラム 現代の希少コイン:1989年発行の中国5元「龍と鳳凰」コインについて
『A Modern Rarity: The Inside Story』
https://www.pcgs.com/news/a-modern-rarity-the-inside-story
1989年発行の中国5元「龍と鳳凰」コインは、純度99.9%の銀2gを含み、直径15ミリメートルの小型コインです。その正確な発行枚数は不明ですが、10枚以下しか鋳造されていないと考えられています。
〇コイン製造における試作の重要性
コインやメダルの生産前には、品質管理のために試作が行われるのが常です。金型をコインプレス機にセットし、数枚の試作品がブランクコインに打刻されます。出来たばかりのコインは厚手の柔らかい布に包まれ、関係者が検査します。その後、機械の設定を微調整し、再び試作を繰り返します。
筆者が中国の関係者に「試作コインはどうなるのか?」と尋ねたところ、「すべて溶かされる」という答えが返ってきました。しかし、これは必ずしも真実ではありません。
〇1989年「龍と鳳凰」試作コインの誕生秘話
かつて中国造幣局は、特定のディストリビューター(販売代理店)に試作品を送ることがありました。この特例が、伝説的な希少コイン誕生のきっかけとなることもありました。
1989年の「龍と鳳凰」コインのプロジェクトに関わったエレン・Wは、次のように回想しています。
「このコインのアイデアは、あるパートナーの発案だった。彼は幼い頃から中国の古銭を熱心に収集し、中国の珍しい絵画も多数所有していた。1988年のある日、彼から電話があり『龍の年のコインはあるか?もしあるなら、明日ロサンゼルスに飛んで、全在庫を買い占める』と言われた。これが彼との出会いだった。」
このパートナーは創造力に富み、新しいアイデアを次々と生み出しました。その一つが「龍と鳳凰」コインの企画でした。そして1989年初頭、中国金貨公司(China Gold Coin, Inc.)と正式に契約を結び、製造が開始されました。
当時の中国造幣局では、試作品(トライアルストライク)が必ず作られていました。1989年の日付が刻まれた試作コインが作られたものの、プロジェクト自体が1990年に本格始動したため、エレンたちは日付の変更を依頼し、造幣局もこれを承諾しました。
〇試作コインの種類と発行数
1989年の日付が入った試作コインには、以下の種類が存在しました。
・1g金貨(ゴールド)
・2g銀貨(シルバー)
・2オンス金貨
・2オンス銀貨
このプログラムでは20オンスの金貨と銀貨も予定されていましたが、それらの試作品が実際に鋳造されたかは不明です。
エレンの記憶では、2オンス銀貨の試作品は4枚を確認しており、最大でも6枚程度しか存在しないと推測されています。
さらに、1g金貨と2g銀貨はジュエリー向けに製造され、多くがペンダントなどの装飾品に加工されたため、現存する未使用品は非常に少ないとされています。
〇1989年「龍と鳳凰」試作コインの驚異的なオークション価格
1989年の日付が入った「龍と鳳凰」コインは、現在、超希少なコインとして高額で取引されています。
・2オンス金貨 → $408,000(約6,100万円)で落札
・2オンス銀貨 → $85,031(約1,270万円)で落札
・2g銀貨 → $28,680(約430万円)で落札
まとめ
・1989年の「龍と鳳凰」試作コインは、10枚以下しか存在しない超希少コインである
・試作コインは通常溶解されるが、一部がディストリビューターに提供され流出した
・1g金貨と2g銀貨はジュエリー向けに生産され、多くが装飾品に加工された
・現存する未使用品は極めて少なく、オークションでは数百万~数千万円の高額落札となる
このような背景を持つ「龍と鳳凰」コインは、現代のコイン市場においても極めて価値の高いコレクターズアイテムとなっています。