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PCGS社コラム:英領インド最初の金貨 ~金とともに歩んだインドの歴史~

『The First Gold Coins of British India』
https://www.pcgs.com/news/the-first-gold-coins-of-british-india

『英領インド最初の金貨 ~金とともに歩んだインドの歴史~』

インドは古来より、宗教儀式・結婚・貯蓄に金を用いる文化が根強い国です。
金貨の鋳造は、紀元100年頃のクシャーナ朝ヴィマ・カドフィセス王から始まりました。
中でもムガル帝国(1526~1857)は、富の面で圧倒的な支配力を誇り、
18世紀初頭には世界GDPの約25%を占める(現代換算で21兆ドル)巨大帝国でした。

〇英国東インド会社の進出と金貨の始まり
1600年、エリザベス1世が東インド会社(EIC)の設立を承認。
1608年にはEIC代表のウィリアム・ホーキンスがグジャラート州スーラトに上陸し、
ムガル皇帝ジャハーンギール(在位:1605–1627)と親交を結び、
以降、交易が急速に拡大していきます。

1613年には、ジャハーンギールが1,000モハール(約12kg)金貨「Kaukab-i-Tali」を鋳造
⇒1987年にスイスのオークションに一度登場したが、落札されず行方不明に

〇アヘン貿易と金貨発行の資金源
茶・絹・陶磁器・香辛料の交易と並び、1650年からアヘンの対中輸出を開始
1757年にはカルカッタ造幣局設立

アヘン輸出量:
1650年:約3,000トン
1822年:約21,000トン(+700%)
1835年:約85,000トン(さらに+400%)

ここでの莫大な利益により、金貨の発行が実現した。

〇1835年発行:英領インド最初の金貨

・コイン概要
発行年:1835年(流通開始は1836年1月1日)
額面:1モハール(11.66g)、2モハール(23.34g)
金の純度:.917(22金)
表面デザイン:ウィリアム4世(Robert Saunders作)
裏面デザイン:ヤシの木とライオン(John Flaxman作)
通貨換算:1モハール=銀15ルピー、2モハール=銀30ルピー相当(法定通貨ではない)

〇2モハール金貨(Double Mohur)
発行枚数:1,174枚
英領インドで発行された最大サイズの金貨
PCGS AU50(1835年Calcutta発行)が2020年に約7万ドルで落札(Sincona AG)
未使用流通品(Uncirculated)は存在せず、Proof(試鋳)もなし
1947年以降、ボンベイ造幣局にて有料でリストライク(再鋳)可能
1970年にリストライク終了&金型破壊

代表的販売例:2022年、Heritage AuctionsにてPCGS PR65DCAM 1835(B) 2モハール再鋳版が$108,000で落札

〇1モハール金貨
2モハールよりも一般的だが、MS(ミントステート)品は稀少
2020年、PCGS MS62(1835年Calcutta発行)が約1万8千ドルで落札(日本 Auction World Co.)
リストライク版の流通が多く、現代的な仕上がりが特徴

〇終焉とその後の金の流れ
金貨鋳造は短期間で終了(1836年中にEICが保有金をすべて英政府に売却)
インド市民は金塊での取引を好んだため、貨幣として流通せず
多くの鋳造済モハール金貨は溶解・再鋳造された可能性が高い
現存のビジネス・ストライク(通常流通品)は非常に少ない

〇余談:ムガル帝国の栄華と金の行方
タージ・マハル(1631–1653建造、2025年換算で建設費10億ドル以上)
頂部の31フィート金製フィニアルは19世紀に英国政府が溶解
英国の金保有:1950年時点で約2,500トン(現在315トン)
インド民間の金保有:現在2万5,000トン超、2024年には72トン追加(RBI)