PCGS社コラム 王冠とマント:王室賞牌・メダルのオークション新記録
『The Crown and the Cloak: An Auction Record for a Royal Prize Medal』
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『王冠とマント:王室賞牌のオークション新記録』
すべてのコインやメダル、トークンには物語があります。しかし、その中でも特に興味深いものがあります。唯一無二の金製品であり、物議を醸した君主、諜報活動、そしてオークション新記録が絡む物語ほど魅力的なものがあるでしょうか。
こうした要素をすべて備えたのが、PCGSによりSP61で真贋鑑定・格付けされた王室賞牌で、2025年12月10日にSpink社のオークションで75,000ポンド(買手手数料込み、約10万300米ドル)で落札されました。これはエドワード8世の王室賞牌としては史上最高額です。
このメダルは22金・57.56グラムで鋳造され、正式名称は
「トーマス・アーノルド博士・近代史賞」
1936年、エドワード8世の在位わずか326日間という短い治世の最中に、ラグビー校によって授与されました。
王室賞牌は、貨幣と同様に在位君主の公式肖像が刻まれるため、貨幣収集家(ニュミスマティスト)に高く評価されています。本作では、トーマス・ハンフリー・パジェットによる、エドワード8世の希少なパターンコイン用肖像が使われています。
裏面は、著名な彫刻家ウィリアム・ワイオンの息子であるレナード・チャールズ・ワイオンによるもので、9行のラテン語銘文が刻まれています。
また、王室賞牌は王室御料局(Privy Purse Office)の依頼により王立造幣局が製作し、王室憲章(Royal Charter)を授与された教育機関などのみが授与できます。
エドワード8世の治世中に鋳造されたのは、17機関による計25枚(うち金22枚、銀3枚)のみで、多くの機関は1枚のみの授与でした。ラグビー校のこの賞牌もその1枚です。
ラグビー校は「クラレンドン・ナイン」の一つとして知られ、大英帝国の行政・軍事エリートを多数輩出してきました。
この賞牌の受賞者は、
パトリック・フィンドレーター・スチュワート大尉(MC, SSM勲章保持者)
元第11軽騎兵連隊(王立装甲部隊)所属です。
彼の後年の経歴で最も注目すべき点は、MI5(英国国内諜報機関)の工作員として活動していたことです。公文書では、彼は「K 3/0」という識別番号で記録されています。
K課は防諜(対スパイ活動)を担当し、「3」は主にソ連関連の情報活動や特定エージェント運用を意味する区分でした。
1961年1月23日付の文書では、スチュワート(K 3/0)が在英米国大使館と安全保障問題について連絡を取っていたことが記録されています。また、悪名高い裏切り者でありソ連の二重スパイ、キム・フィルビーに関する「ファイル要約」を作成し、K顧問に引き渡した記録もあります。
彼は、MI6(対外諜報機関)へのソ連スパイ浸透事件という、英国諜報史上もっとも機微な案件において、情報統制に深く関与しました。
さらに、
マクダーモット事件
ヘンリー・ワージントン・ファイル
ウィルソン陰謀事件
バーナード・フラウド悲劇
といった重要案件でも中心的役割を果たしました。
今回のオークション新記録は、PCGSによって真贋・状態が保証されたコイン、トークン、メダルに対する、収集家からの強い信頼を示すものです。